百の眼が見ていた 菊川近子の心霊と業の世界

今回は菊川近子さんの「百の眼が見ていた」について語ります。

 

菊川さんがホラー漫画を描かれていた80年代半ば頃、この頃はちょっとしたホラーブームだったのでしょうか??漫画以外の書籍(子供向け)にも、お化けや怪奇ものが多かった記憶です…。が、そういうのが子供の頃から好きで、目に付いていたからかもです。

他にも、成毛厚子さん、曽祢まさこさん、松本洋子さん、はざまもりさん…。

時代を広げれば、あしべゆうほさん、篠原千絵さん、高階良子さんなど…ホラーやミステリを手掛ける漫画家さんが多かったような…。

当時、漫画は単行本のジャケ買いだったので、山岸涼子さん、萩尾望都さんなどは、子供の私には引っかからなかったようです。まあ、それでよかったかも、子供にはちょっと強烈な作品多いですよね。

 

 

可愛さと恐ろしさとやるせなさ

 

そんなわけで(どんなわけだ?)好みの絵のホラー漫画を買っていた私を釘付けにしたのが、こちら。

 

 

どうでうすか?この表紙でネタバレしてくる直球ホラー!

開始早々、昔「百眼鬼」が祠に封じられたという昔話が語られるので、読者は封印を解いた者に、百眼鬼が災い為すんだろうな…と予告されて物語を見守ります。

 

主人公は両親を亡くした紗紀と従妹の杏(きょう)、二人はじわじわと百眼鬼の呪いに取り込まれていきます。悲劇の始まりは、杏が沙紀を思うが故の行動だったので、見ていて余計に悲しいんですね。

オーソドックスなホラーなので、夏の単発ドラマなどで映像化してほしい作品です。

 

読み返してみて、もっと古くさく(失礼!)感じるのかと思いきや、そんなことは無かったです。小物とか家具とか…当時の常識とか…時代を感じるのはその点くらいでした。

 

 

 

 

ちょこっとネタバレ

 

表題作のほかに「過去を知る黒子」「天児の呪い」「黄泉への誘い」が収録されています。そもそも霊という存在は、生死に関わらず人の念が形になったものですが、菊川さんの作品は「人の業」が時に霊より怖かったりします。そして「なんでこんなことに…」と罪を犯した登場人物にさえ、同情してしまうことも。

 

主人公が何故か怪異に遭遇する…という設定よりも、なんらかの因果があったり、他人に悪意を向けたり、謀をしていたり…自らの陰の気で霊を呼び込んでいる…というものが多いです。

 

 

 

内気な沙都は、女性教師から度を越した贔屓をされクラスで孤立。劣等感と嫉妬に悩まされる沙都に近づいてきたのは…表題作「悪魔のほほえみ」

この世に思いを残した少女の悲しい願い「真夜中の鎮魂歌」

転校で新しいクラスに馴染めない瑞穂が頼ったのは異国の神だった…「アステカの魔神」

全寮制の学校にいた娘が自殺…悲しみに暮れる両親のもとに、娘に似た少女が現れて…「悪魔のささやき」

 

この頃の日本の漫画に登場する「悪魔」は「オーメン」は「エクソシスト」のように強大な力を持ってないことが多いです。素人の付け焼刃な儀式や呪文であっさり退散しちゃいますし。「悪魔」に関しては松本洋子さんも多く描かれてまして、こちらも重い白いです。今度ご紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

表題作「見えない叫び」「3人目の恐怖」はホラーというよりサスペンスです。

幽霊は恐怖の味付けですが、このスタイルが菊川さんは多いかな。

「自殺志願-名前のない少女ー」は何度も自殺を計る少女の不思議な話…いやー人って親切ですねぇ…これが下心のある親切だったら、読後感は違ってきます。

 

 

 

 

ひょんな事から「いのちの火」が見えるようになった修子。

「いのちの火」が弱まっている人を救おうと奔走しますが…。

ただただ失われていく命を見届ける修子と読者です。にしても、修子の周りで人が死に過ぎ…。私が読んだことのある中では、同じキャラの話が続くのは、この修子シリーズくらいでした。

最後はあっさりと終わるので、幽霊というよりやはり「人の業」を描きたかったのでは、と感じられる作品群です。

 

 

 

 

 

 

表題作「心霊夜」はリリス(子供を狙う外国の霊)の伝説を下地にした物語。子供を思うが故、愛を取り違えた母親たちの悲しいお話でもあります。

「額の中の風景」は予定調和で、どこかで見た(盗作ってわけじゃなく)ような展開です。が、登場人物の表情やホラー独特のトーンが恐怖を演出し、次が予測できているからこそのドキドキが楽しめます。

「黒猫の儀式」人を呪わば穴二つ…にしても登場する母親が身勝手すぎた…。

 

 

 

 

収録作品は表題作と「顔」「たった1人の双子」「闇にうごめく」「暗黒の音」

物語として原因と根拠が語らえるのは「たった1人の双子」くらいです。

「顔」は菊川さんらしい因果応報話ですが、他は突然降りかかた災難のようで「暗黒の音」に至っては、めずらしく え?なんだったの??と消化不良に…。

骨組みのしっかりしたホラーというより、とりあえずゾッとしたい…という時にぴったりの作品群というところでしょうか。

とはいえ「たっだ1人の双子」は読みごたえがあり、「なんでこんなことに…」と同情を禁じ得ない、菊川さんならではのお話です。

 

 

 

残念なことに電子化されてないのですが、「悪魔の招待状」という作品も面白いです。

正気を失って発見された友人に何があったか探ろうと、彼女が訪れたと思われる教会に向った主人公。そこは教会ではなく、若い女性のための救済施設で…というお話です。

 

 

 

あらためて読み返したんですが、菊川さんは日本が舞台のお話が多いです。もしかしたら、私がもってる中には外国人設定の作品は無いかも?

顔立ちとかインテリアは洋風なので、そういうお話でも違和感ないと思うんですけど。

 

菊川さんの作品は、ミステリーあるいはサスペンス色が強く、ホラーと言っても超絶怖くはありません。電子書籍版もありますので、機会があればぜひぜひ、ご一読ください。

 

 

 

おわり。

 

 

 

 

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