ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷 ホラーと思わなければ良し

さて、今回語らせていただくのは、映画「ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷」です。

 

 

 

実在するウィンチェスターハウス

 

ウィンチェスターハウスは、アメリカ、カリフォルニア州サンノゼに実在するお屋敷だそうです。

当主はサラ・ウィンチェスター、ウィンチェスター社の創業一族です。

ウィンチェスター社は、”西部を征服した銃”と称されたウィンチェスター銃を開発し、一族は莫大な富を得ています。

 

1880年頃、ウィンチェスター社の大株主だったウィリアムは、莫大な財産と51%の株式を残しこの世を去ります。ウィリアムには妻サラとの間に娘がいましたが、生後間もなく短すぎる生涯を終えています。

 

ウィリアムの死後、一人残されたサラはサンノゼに転居し屋敷を購入。無計画で無秩序な増改築を死ぬまで続けた、と言われています。

 

一般的に伝わっている事実は、相次いで家族を亡くし(義父、母、夫)悲嘆にくれたサラは霊媒師を頼り、「一族はウィンチェスター銃によって殺された人の霊に呪われている。霊の為に、アメリカ西部に家を建て続けることで、呪いを回避できる」という助言に従った という説です。

サラは24時間365日、38年間も屋敷の増改築を繰り返したのでした・

 

この霊媒師の助言が本当にあった事なのか、サラがどこまで本気で信じていたのか、なぜ「アメリカ西部」と限定されたのか…今となってなわかりません。

ただ、ウィンチェスターハウスは、自社の銃によって殺された人々の霊に呪われている…と伝えられているだけです。

 

 

 

 

魅力的な舞台とおきまりの設定

 

100を超える部屋、天井に続く階段、寄木細工の床や壁。迷路のように入り組んだ7階建ての大豪邸は、それだけで物語として想像を掻き立てられます。

さらに「霊の為に建てられた部屋」といういわくつき。

舞台設定はバッチリというわけです。

 

 

呪われた〇〇はよくある設定です。呪われたり祟られたりが無いと、ホラー映画にならないので当然ですけども。当然「呪い」を祓う者も必須です。

だいたいが「呪い」と浅からぬ因縁を持つ者が導かれるように現れて、自身の内なる闇と対峙しつつ、呪いと闘うことになります。

 

映画、ウィンチェスターハウスもご多分に漏れません。

白羽の矢が立ったのは心の闇を抱えた精神科医、エリック・プライスです。

 

ウィンチェスター社の経営陣は夫の死後25年にわたり、休みなく屋敷の増改築をするサラを訝しく(疎ましく)思い、彼女が経営権を持つに相応しい健康状態なのか調べるよう、エリックに精神鑑定を依頼します。

酒や阿片におぼれ堕落しかけているエリックは、1906年4月中旬、気が進まぬままウィンチェスターハウスに赴くのです。

 

 

 

 

 

 

↓ネタバレ

 

 

 

 

「増築し続けないと死ぬ」というキャッチコピー、複雑怪奇な間取り、黒衣の老婦人。どんな仕掛けが屋敷にあるのか…サラはどんな人なのか…と期待すると肩透かしを喰らいます。

 

屋敷の複雑さ奇妙さは物語にこれといって作用しておらず、邦画でいえば暗がりの日本人形とか、障子越しに柳が揺れるとか、その程度の役割です。

サラは妄信的ともいえますが、思慮深く聡明で終始毅然とした老婦人のまま終わります。

祓い役のエリックも、凡打設定でクリーンヒットエンドみたいな…。

 

なんて下げた書き方ですが、それなりに楽しめました。

 

 

 

 

館は呪われているのか

 

映画ではウィンチェスターハウスの特徴である「奇抜な間取り」は意味を持ちません。

どう建っているかより、「なぜ建てられたか」に重きを置いてます。

 

サラは霊を見る事はできませんが、その存在や思いを感じる事が出来ます。

霊たちはサラの体を使って、自らが死んだ部屋をスケッチするのです。

出来上がったスケッチをもとに、部屋を増築していくわけですね。

まあ、「死んだ部屋」というより、「思いが残る部屋」なのかもしれません。

ウィンチェスター銃で殺された人となると、戦場とか処刑場とか…屋外がほとんどだと思うので。

 

部屋が完成すると霊の力が増し、サラと会話が出来るようになります。サラとの会話で安らぎを得られれば霊は去り、去っていけば部屋は取り壊され、別の霊の為に部屋を作る。安らぐことなく暴れる霊は封印する…この繰り返しです。

屋敷には既にいくつか封じられた扉があり、エリックが何故か気にしている庭園も封印されていました。

 

作った部屋にどんな霊が訪れるのかは、サラにも分かりません。

ただウィンチェスター銃によって命を絶たれた、という事だけです。

 

 

屋敷は呪われているというより、鎮魂の為に増改築を繰り返していました。

 

 

 

 

 

安らぎを得られない霊

 

エリックがウィンチェスターハウスを訪れた日、今までで「最も邪悪な霊」もまたその力を強め、残されたサラの家族(姪とその息子)に魔の手を伸ばします。

個人的には「最も邪悪な霊」、<彼>が特筆するほど無残な死を遂げたのかというと…。いやもっと理不尽な死を迎えた人も、それこそ何の罪もないのに虐殺された人もいるよね??となってしまうんですが…まあ、念が強かったってことなのかもしれません。

 

 

<彼>の目的はウィンチェスター一族を根絶やしにすること。

自らが殺された部屋を手に入れた<彼>は、サラの説得に耳をかさず、屋敷中を揺るがす強大なポルターガイストを起こし、エリックを部屋から追い出します。

 

エリックは部屋に戻ろうとしますが、入り口は瓦礫で閉ざされてしまいました。

あちこち崩壊した屋敷、もちろん封印されていた部屋も崩れていました。

ここで何を思ったかエリックは、気にしていた庭園に向かうんですね。

突き動かされた、ということでしょうか。

 

そこでエリックは、定石通りに心の闇を乗り越え、庭園に封じられた霊に安らぎを与え、サラを救いに戻るのです。

 

 

 

 

謎過ぎる謎

 

呪いで始まるホラー映画には「謎」がたくさん盛り込まれます。

解決される謎もあれば、ただ恐怖を煽るだけで意味は無かったり、話を進めるために必要なだけで根拠は無かったり、回収されない謎も多々あります。

 

安らげない霊を封じる方法は「13本の釘で扉を封じる」というもので、サラが言うには13は神聖な数字なんだそうな。(実際のウィンチェスターハウスも13にちなんだ装飾が多用されているらしいです)

一般的には忌み数とされる13で、霊を封印できるんですかね…。

この13もなんで?って思うのですが、サラがこだわった数字だから~が答えなんでしょうけど。

 

この映画の最大の謎は、エリックが庭園で出会う霊たち(庭園に封じられた霊ではない)かと思います。

庭園の霊を解放した後に、彼は数体の霊と出会うのです。

見た感じでは、ウィンチェスター銃によって命を奪われた人々のようです。

しかし、彼らには敵意が無く、むしろサラを救うよう促してるようでした。

 

この場面は短いので、霊が何体いたのか正確に確認しにくいんです。

もともと屋敷に封じられていた霊の数も不明なので、彼らだとは言い切れません。

サラの命を狙っている<彼>に関連する数字があるのですが、これとも一致しないので、<彼>にまつわる霊でもなさそう。

 

彼らが何故、サラに味方したのか…わからないままで、見る者を困惑させます。

 

 

 

お決まり過ぎるオチと混乱させる最後

 

サラのもとに駆け付けたエリックは、大奮闘の末に<彼>を打ち払います。

よくある手段での退治(?)で、<彼>は納得したというよりは、捻じ伏せられた気もします。あんたそれでいいの?というくらいです。

また姿は見せませんが、この戦いに封印されていた霊が加勢しています。

彼らは<彼>が消えると、部屋に戻りなさい、というサラの指示に素直に従います。

え??じゃあ封印する必要なくない??混乱~~。

あ、それなら庭園の霊は、やっぱり封印されてた霊なのかな?

 

とはいえ、一件落着。

エリックは、雇い主が喜びそうもない結果を報告し、サラは生涯をかけ「増改築」という罪滅ぼしを続けるのです。

 

 

さて、歴史に明るい方は既にお気づきかと思いますが、カリフォルニア州1906年4月中旬に大地震に見舞われています。

<彼>が起こしたポルターガイストは大地震として片付けられているわけです。

 

映画で特にそう言ってるわけではないのですが、大崩壊した屋敷を、職人たちが何の疑問を抱かずに修復しているので。大きな揺れは屋敷に起きた怪異ではなく、地域全体に及んだ災害に落とし込んでいます。

 

 

これね、ウィンチェスター銃にまつわる呪いが~と風呂敷を広げたけども、最終的には恐怖は心のうちにある…気の持ちようですよ~で畳まれちゃったようで。

え??となってしまうんですね。

そのうえ、ラストはお決まりの匂わせで終わりという…。

 

 

 

 

呪いは誰にかけられた?

 

ウィンチェスター銃が多くの命を奪ったことは間違いないでしょう。

1857年から製造を開始されたそうなので、先住民の殺害、南北戦争奴隷解放など、まさにアメリカと歩んだ銃なのでは。

 

かつて味方を奪った驚異的な武器を、自らが手にし敵を撃つ。

今に続く銃社会は既に始まっており、ウィンチェスター銃はその負の連鎖を更に強固にしたのかもしれません。

 

自衛や抑止をうたい武器を持ち、正義と称して人を傷つけ殺める。

ウィンチェスター銃は、さらに小型の銃となり、あるいはミサイル、あるいは核に姿を変え現代に生きています。

手にしてしまった強力な武器を、人は手放すことはできないでしょう。

それこそ呪いにかけられたように…。

 

 

まとめ

 

ウィンチェスターハウスは、ホラー映画としてはやや物足らないといえます。

エリックの抱える闇や、ウィンチェスター一族を憎む<彼>の演出は、ミステリーっぽくもあります。

霊の存在やその力を示しつつも、「恐怖は心の中にある」など、自分を強く持ち恐怖に打ち勝つこと強調しいて、先に書いた地震の件もあり、ホラー、怪奇現象を否定してるかのようです…ホラー映画っぽく作ってるのに。

 

特にジャンルを考えずに、『人を殺傷する「銃」という忌まわしい武器にまつわる物語』として鑑賞してみれば、あれこれ細かい粗を気にせずに、楽しめると思われます。

ヘレン・スミス演じるサラは凛としていて、作品全体に品を与えているのも必見です。

 

おわり。

 

 

 

 

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