ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 ミステリーと観る勿れ オマージュを探せ!

 

本日は「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」について語ります。

釣りタイトルですみません。でもこの映画、本当にミステリーじゃないんです。

事件が起き、探偵も登場しておりますが、これは「ミステリー」でも「サスペンス」でもありません。

風刺のきいたエンターテイメントみたいなものです。

 

 

 

あらすじ

 

著名な推理作家であるハーラン・スロンビーが85歳の誕生日の翌日、遺体で発見される。現場の状況や遺族の証言から、自殺は疑いようが無かった。が、名探偵ブランは匿名の人物から、ハーランの死の真相を暴くよう依頼される。

スロンビーの子供たちはそれぞれ事業に成功し、家政婦やハーラン付きの看護師を家族同然に迎え入れ…。一見何一つ問題の無い一族だが、ブランの調査が進むたびに綻びが露になっていく。

果たして、ハーランの死の真相とは…。

 

 

 

ナイブズ・アウト

 

ナイブズ・アウトとは「複数の刃物が出た状態」という意味です。

ちょっと話が逸れますが、映画「椿三十郎」に「本当に切れる良い刀は鞘に収まっている。あなたの刀はぎらぎらと剝き出しだ」というような台詞がありました。

この「ナイブズ・アウト」の館でも、登場人物それぞれが刃物剥き出して、ぎらぎらちらつかせているのです。

その象徴として、一族が刑事と探偵から事情聴取される時、彼らの後ろには、ナイフが放射状に飾られたオブジェクトが置いてあります。

 

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ナイブスアウト

みなさんこのオブジェクトの前で、ぎらぎらと一族のネタを披露してくれます。

ちょっとした「渡鬼」です。

 

 

 

ストーリーとは無関係の秘密を楽しむ

 

ややネタバレしますが、ハーランの死の真相は序盤の回想と言う形で、視聴者にだけ明かされます。

その謎にいかに探偵が辿り着くか、それを隠したい人物がどう立ち回るか、その立ち回りに探偵は気付くか、一族の人間はどうでるか…などを、言ってみれば「ドッキリ」を見てるかのように楽しむ作品です。(人が亡くなっていてますけども)

 

なにより、この作品には名作映画のオマージュや風刺がいくつか織り込まれています。

日本のあの映画もちょこっとだけ登場しますよ!

例えば推理小説家のハーランが85歳で亡くなったのは、アガサ・クリスティーと一致します。

そんなどうでもいいこと…と思われるかもですが、その「どうでもいい類似点」がけっこう多くて、笑いそうになります。

 

私が気づいたのはほんの一部ですが、映画好きな方ならたくさん発見できるのでは?

もしかしたらカメラワークなんかも似てる部分があるのかも。

不自然じゃ?という演出や、大仰な演技は、オマージュかもしれません。

視聴される方は、是非そのあたりを楽しんでください。

 

 

 

格差社会

 

物語のキーマンである看護師のマルタは、ウルグアイの出身です。彼女の母は実は不法滞在者で、これはマルタの雇い主であり、患者であり、何よりも良き友人であったハーランも知っていました。

 

母のことは知らないスロンビーの一族は、ハーランの死後もマルタに優しく接してくれます。しかし、彼らの本性は必ずしも言葉通りではありませんでした。

 

常にマルタにたいして上から目線の一族ですが、歴史をたどればアメリカ大陸はマルタの先祖たちのものです。歴史上では彼らを追いやった白人が、まるで難民を受け入れる人徳者であるかの如く振舞っている。そんな風刺もしっかりと描かれています。

最後のシーンで、マルタが手にしているマグカップにもご注目くださいね。 

 

 

プロットはしっかり

 

謎解きが楽しめるミステリーとは言えませんが、プロットはしっかりしています。お粗末と言えばお粗末なトリックですが、そこも織り込み済みなのです。

 

最終段階まで謎解きが終わると、ハーランの行動に疑問が残るかもしれません。

けれども、ハーランは自分の身に何が起きてるか(あるいは起きてないか)、推理作家としての知識と観察力、洞察力で全て分かっていたのでは…。

映画の中でも語られますが、ハーランは誕生日前からいろいろと身の振り方を変えています。彼は自らに何かが起きるであろう、と予感していたのかもしれません。

その為に描いた計画を託すのは、信頼している友人のマルタだったのでしょう。

 

 

鞘に収まった刃

ところで、看護師のマルタはある特異体質で、これを作中で登場人物たちに利用されます。最後に彼女自身が、盛大にこの体質をいかしてくれるので、ここもすっきり!そのうえ、名作のオマージュ込みで!

 

ハーランの事件はマルタにとって大変な出来事となりました。

しかし、彼女が時折眺めるハーランの肖像画は、常に彼女の心に寄り添っていました。

 

スロンビー家は互いのナイフをちらつかせ合っていたようですが、「本当に切れる刃」は常に鞘に納まっていたのかもしれない。

 

 

 

ミステリーと観る勿れ 

どんな謎解きだろう、トリックは? 犯人は?と前のめりで観ると、この映画は期待外れになってしまうかもしれません。

もっと気楽に、名作オマージュを探しながら鑑賞することで、現代社会の抱える闇や、人間の偽善が浮き彫りにされていることに気づかされます。

ミステリーと思わずに、楽しんでいただきたい映画でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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