本日は1965年のイギリス映画「バニー・レイクは行方不明」について語ります。
この時代のイギリスと言うと…音楽ならビートルズ、ローリングストーンズ。
ファッションならモッズ、サイケ、ヒッピーとかなんでしょうかね。
なんというか、鬱屈した時代という印象があります。
映画はモノクロです。アメリカ制作と記載しているサイトもあるので、舞台はイギリスですが制作はアメリカかもしれません。(←適当)
あらすじ
アン・レークは兄のスティーブンを頼って、アメリカから一人娘のバニーと共にロンドンに越してきた。妹思いのスティーブンは二人の為にアパートと保育園を手配してくれていた。
引っ越し作業で忙しいアンは保育園にバニーを預けに行くが、担当の先生はおらず、やむなく食事係の女性に言伝をして園をあとにする。
ぞんざいな食事係の女性、無断でアパートに侵入する大家、新しい環境に戸惑うアンは気持ちが落ち着かなかった。
荷物の搬入を済ませたアンは、急いでバニーを迎えに行くが、母親と園児たちが犇めいている園にバニーの姿が無い。食事係は姿を消し、職員は誰もバニーを見ていないという。
そればかりか、アパートの荷物からはバニーの所持品だけが無くなっていた。
通報を受け、捜査に乗り出した刑事は「娘がいる」というのはアンの妄想では…と疑いだすが…。
失踪する子供
子供が行方不明になり「最初からいなかったのではー」と言われる設定は、ジョディ・フォスター主演の「フライトプラン」を見たことがあります。
飛行中の航空機という巨大ながらも完璧な密室で、6歳の少女が行方不明になる。
娘と共に搭乗したというのは母の妄想なのか?
乗客全てが容疑者という予告編に魅せられて、当時映画館に見に行きました。
アクション映画としては面白かったですけど、サスペンスとしてはどうなのかなぁ…。ちょいちょい無理があるのでは、というのが感想です。面白かったけど。
「フォーガットン」も子供が失踪する話ですね。
違うのは、息子が事故で亡くしてしまった後に、母以外の人々の記憶から息子が消えてしまったという設定である事です。
これは評価が分かれる映画かな。ちょっと吹っ飛びすぎ?
「バニー・レークは行方不明」でも、「娘がいるというのは母親の妄想では」となりますが、「フライトプラン」と大きく違うのは、子供の姿を視聴者にも見せないところですね。
アンは美しい女性なのですが、「子供を慈しむ母」を映像で見せられることがないまま、事件が起きてしまいます。情緒不安定なアンを見てると、バニーを見ていない者は(本当にいたのかな?)という気にさせられるのです。
と同時に、保育園から子供がいなくなるというのは、あってはならない事ですが、あり得る事。園の監督不行き届きや、誘拐、事故など、子供が姿を消す理由はいくつも考えられるので、見る側もいろいろな可能性に頭を巡らせられるわけです。
怪しい人ばかり
園の関係者はみんな怪しい…。無責任だったり、保身に走っていたり。
大家も気持ち悪いし、そうやって疑いだすと良い人も怪しく見えてしまう。
仕舞いには刑事や兄までもが、アンの妄想だと思ってるかのようだし…。
アンは娘の実在を証明するため奔走しますが、どうも的外れと言うか逆効果になってしまうんですね。
この流れは、物語の展開が見え始めた視聴者にも、サスペンス的に楽しめると思う。
何を怪しく思うのか
物語の途中から、展開はだいたい予想が付いてきます。
「バニーはどこにいったのか」は重要ではなく、子供が消えた事で浮き彫りになる兄妹の関係や、失踪事件に関わる人々の言動が興味深いです。
子供が失踪する状況も、母親が子供を探す行動も、結末と真相も、身近で起きそうなところがこの映画の怖いところでしょうか。
映画を見ていて、誰を怪しいと睨み、どんな行動に「無責任だ」「異常では」と思うのかで、自身の思考回路を見せつけられました。
映画なので見せられたものしか見えないのですが、物事の一面だけを見て判断するのは危険ですね。
言いようのない不安感
異国への引っ越し、子供の失踪、映画は終始ざわついてて、どの人物を信頼していいのかもわからず、視聴者はなんとなしに落ち着きません。
その不安感はラストに向って、思いもしない方向に押し出され(展開が以外という事ではなく)ていきます。
失踪事件はしっかりと刑事が解決してくれるのですが、なんというか…。
私はラストの刑事が到着する直前のアンの姿が焼き付いてるんですね。
あのシーンはなんなんだろうか…。
あれこそがこの事件を引き起こした狂気の根源な気もしてしまうのでした。
そんなわけで、「バニー・レークは行方不明」ミステリーでありサスペンスでありサイコでもあり…。
面白い映画なので、未視聴の方はぜひ、ご覧になってくださいね。